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現行の広大地評価法の廃止と新評価法適用について 川崎市の不動産鑑定士が説明

現行の広大地評価法の廃止と新評価法適用について 川崎市の不動産鑑定士が説明

2017/09/05

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現行広大地評価法の廃止 新評価法の適用

 

 

相続税節税で一番効果が大きい大規模地の相続評価の「現行広大地評価は」広大地判定があいまいで判定に問題が多いことから平成29年末で廃止され、新たに「地積規模が大きな宅地の評価」が平成30年1月からの相続に実施されています。

 

この改正で現行評価での広大地判定のわずらわしさはなくなり、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の宅地に対し、相続土地の個別的要因(不整形、道路接道不足等)の各種補正等の補正率に加え、新たに地区別の「規模格差補正率が適用されることになりました。

 

 

1、現行広大地評価廃止の経緯

 

相続節税で相続土地価額を下げて節税する方法として「広大地評価」という手法があり、広大地として判定されていればその土地の面積が例えば2000㎡でー50%m、5000㎡でー65%と非常に大きな評価減が得られて相続人は大変な節税効果を取得していました。

 

しかし、税務当局は簡単に広大地判定を与えては相続税収入が減ってしまうので、敢えてその広大地判定を簡単にできないように曖昧にして相続人及び担当税理士を混乱におとしいれ、税務当局と争う状況にまでになってしまったのです。

 

 

例えば、不動産市場では標準的な土地面積120㎡の低層戸建住宅地の価格が300,000円/㎡であって、その隣接地に存在する2000㎡の大規模地の土地価額が相続対象になった。

 

不動産市場でのこの土地の最有効使用は当該地域の土地利用及び相続土地の個別的要因を考慮して戸建て分譲開発素地と判定されます。当該土地は規模が大きい戸建て分譲開発素地なので、購入者は開発業者に限定されます。

 

開発業者はこの土地開発素地価格で購入して、開発指導要綱に基づき、開発造成して分譲する訳です。実際には開発造成後の建物付きの建売分譲住宅として業者の適正利潤を含めての総分譲収入から開発造成費用、分譲販売費用等を控除しての開発素地価額が求められます。この実務的に行われている開発法の手法を不動産鑑定士は適用し2000㎡の土地価額を求めます。

 

現行の広大地評価も一応は不動産鑑定評価での開発法まがいの算式で求めることになっていますが、広大地であることの要因及びその土地の最有効使用の判定があいまいで、不動産鑑定士としては考えられない評価状況にあります。

 

現行の広大地判定は戸建て分譲開発素地に限定され、そのうえ、開発に当たっての開発道路の負担を要する土地のみに認められ、マンション用地は広大地から除外されるという現実離れした非合法的な考え方を採用し、更にはその土地の形状等に無関係で、単に面積差によって減額率が決められて不動産市場での価格と乖離してしまって問題になっていました。

 

私共不動産鑑定士からすれば、なんていい加減な、おおざっぱな評価手法で、これで大幅節税が出来るなんておかしいと思っていました。実際には担当税理士はその相続土地が広大地なのかどうかの判定基準があいまいで難しいので敢えて広大地評価をしないで申告をして、その結果相続人から損害賠償の請求の裁判を起こされ敗訴した事案もあるくらい問題になっているのです。

 

そこで国税当局もこのままでは問題が大きくなってより混乱が増してしまうとの判断で、現行の「広大地評価」を平成29年末で廃止して「地積規模の大きな宅地の評価」が新設され、平成30年1月からの相続案件から実施することにしたのです。

 

 

2、新評価の改正

 

現行の広大地評価の問題点(特に相続土地の形状等の個別的要因が反映されていない)を解消することに重点が置かれ改正された。

 

・各種補正の適用

 

これまで広大地評価と重複適用できなかった補正(奥行価格補正、不整形補正等)が可能になります。

 

・適用要件の明確化

 

新評価手法が適用できる地区区分が普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に限定される

 

現行法の単なる面積だけでなく、その土地の不整形等の個別的要因の各種補正を行い、更に地区別の地積規模に応じた規模価格補正率を乗じて規模格差補正に基づく評価をすることになっている。

 

 

・新評価手法のメリット

 

①三大都市圏で500㎡以上(その他の地域では1、000㎡以上) ②容積率400%(東京都特別区300%)未満の土地で ③普通商業・併用住宅地区、及び普通住宅地区に存在している。

ただし、④開発行為が出来ない市街化調整区域、⑤都市計画法の工業専用地域の土地は適用できない。

 

 

現行の広大地評価の要件である「戸建分譲が最有効使用であること」「開発道路等の公共公益施設用地の負担が必要であること」で旗竿地は現行の広大地評価が適用できなかったが、今回の改正では開発道路の負担がない土地でも新評価要件を満たせば地積規模の大きな宅地の評価の適用が受けられます。

 

従来問題になりがちだった幹線道路沿いのロードサイド店舗や道路沿いに沿って区画ごとに羊羹切り可能な開発素地、開発道路不要の敷地延長での開発可能地、ビル、マンション建築済み宅地でも上記の5条件に該当すれば新規模格差補正率は適用できます。

 

 

・新評価手法のデメリット

 

現行広大地評価の「広大地補正率」と新評価手法の「規模格差補正率」を比べると全体的に規模格差補正率の方が減価率が低く、かつ、現行広大地評価では適用されなかった奥行逓減率や不整形地補正率等の個別的要因格差修正を併用できるようになったとはいえ、新評価手法で評価した土地価額は相当高くなります。

 

 

対応策 

 

新手法が鑑定評価での開発法と比べ、形式的にはそれなりの考え方を取り入れてはいますが、最終的にはその相続土地の最有効使用が何かを判定し、個々の法的条件、不動産開発市場動向等を役所及びデーターバンクで調査し、不動産鑑定評価の開発法を不動産鑑定士が適用して時価を評価しなければ完全とは言えません。 基準となる相続土地の前面相続税路線価は時価の約80%の価格になっており、更に相続土地の個別的要因の例えば奥行逓減等の補正率が市場での適正な減価率から乖離した補正率での評価になる可能性がある場合は不動産鑑定評価して申告価額とすることも可能です。

 

 

 

規模格差補正のフローチャート

 

   ① 相続土地  

   ② 面積 (三大圏・・500㎡ その他・・1000㎡) 

   ③ 市街化調整区域外の土地

   ④ 工場専用地域外の土地  

   ⑤ 容積率( 東京23区・・300%未満、 

         その他・・400%未満)

   ⑥ 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区

 

 

以上の②から⑥までをクリアーされれば規模格差補正率の適用が可能

 

 

現行広大地評価法は相続土地の最有効使用が戸建分譲住宅地素地でかつ開発に伴っての開発道路等の用地負担を要する土地に限定されていたが、この度の改正でその土地の最有効使用が戸建分譲住宅素地に関係なく、⑥の地区に存する大規模地であれば規模格差補正を適用できることになり、従来の開発に伴う道路等の負担要件はなくなりました。

 

現時点での詳細な評価方法は明確でないが、上記の規模格差補正フローチャートから推察するに現行広大地評価法での広大地判定3要件(面積大、戸建て分譲開発素地、開発に伴う開発道路負担あり)のうち面積大は残っているが外の要因はなくなり、上記フローチャートでの⑤、⑥の地域的及び地区の要因による判定に替わっている。

 

具体的には、その土地の最有効使用は⑥の用途別地区要因の範囲で決まるとすれば、⑤の容積率で東京23区では300%未満にしばりが掛かっているので分譲マンションとしての採算的な捉えからすると分譲マンション用地としての判定は難しくなるが、新評価手法での相続土地の最有効使用が戸建分譲開発素地なのか分譲マンション用地なのかの判断による適用要件はないと思料できる。

 

 

 

設例

 

三大都市圏に存する規模2000㎡な整形な大規模地 相続税路線価 100,000円/㎡

 

① 現行の広大地評価を適用した場合の評価額

 

100,000円/㎡×(0.6-0.05×2000㎡/1000㎡)×2000㎡

                                  

                       =100,000,000円

 

② 改正案の規模格差補正率を適用した場合の評価額

 

               注1        注2

   100,000円/㎡ ×0.92   ×  0,75 ×2000㎡

                        =138,000,000円

             

 

    注1 各種補正率   ・・・・奥行長大補正 奥行逓減補正

    注2 規模格差補正率 ・・・ 規模2000㎡の規模格差補正率

                              -25% 

                     (100%-25%=75%)

 

以上より改正による評価額が38,000,000円高くなっている

 

 

 

規模格差補正率の算式

 

規模格差補正率 = {(地積×B+C)÷ 地積}×0.8

 

 

上記算式の「B」および[C」は地積が大きな宅地が所在する地域に応じ、下記の数字を採用して上記算式に当ては評価額を求める

 

(三大都市圏に存在する宅地)

 

   地積                 

                                       B               C

  

    500㎡以上 1000㎡未満      5     25 

 

   1000㎡以上 3000㎡未満      0 5

 

   3000㎡以上 5000㎡未満      0.85    225

 

   5000㎡以上              0.80    475

 

 

三大都市圏の規模格差補正率を上記の算式に数値を入れて求めてみる

 

1000㎡の場合

     {(1000㎡×0.9+75)÷1000㎡」×0.8=0.78

   3000㎡の場合

     {(3000㎡×0.85+225)÷3000㎡}×0.8=0.74

 

 改正前現行広大地評価の広大地補正率と改正後の規模格差補正率の比較

 

 (三大都市圏)              (三大都市圏外)

 

面積 ㎡   改正前        改正後     改正前     改正後

 500   A×0.575    B×0.8  

1000  A×0.55     B×0.78  A×0.55 B×0.80

3000  A×0.45     B×0.74  A×0.45 B×0.74

5000  A×0.35     B×0.71  A×0.35 B×0.   72

1万           A×0.35      B×0.67  A×0.35 B×0.68

2万    A×0.35     B×0.65  A×0.35 B×0.66

 

 A・・・正面路線価  B・・・正面路線価×(奥行補正率、側方、二方

 等影響加算率、不整形地補正率)

 

 

 

(改正後の評価の疑問点)

 

不動産鑑定士の立場から今回の改正評価法は改正前の広大地評価の適用要件の曖昧さを解消し、最有効使用も戸建て開発素地に限定せず、マンション適地まで改正法の適用要件を充足していれば適用することになったことは一歩前進かもしれないが、細部では下記の疑問点がある。

 

 

1、相続地の最有効使用が戸建住宅住宅素地なのかマンション用地なのかによって規模格差は実際には異なるのに改正法には反映されていない。

  

 

2、同じく、相続土地の前面の相続税路線価の標準的使用とその標準的規模がどうなのかその把握が出来てないと適正な規模格差修正は出来ない

 

  

最終的には、標準的使用の用途・規模に対して相続土地の最有効使用の規模と用途が明確でないと正確な評価は出来ない。

  

よって、簡単に改正評価手法を適用するのでなく、上記の点を良く吟味しないと実勢価格と乖離した価格になってしまい問題になってしまうので必ず不動産鑑定士に相談下さい。

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注目

 

この新広大地評価の適用は平成30年1月からの相続案件から適用されます。現行広大地評価法に比べ相対的に評価額が高くなります。その分現行の相続税に対して高い相続税になります。

 

広大地評価を含めて相続税還付等の根源は、相続土地の時価評価が適用され適正な時価が求められているかにあります。

ですから、改正新評価方法は適用されていますが今迄以上に不動産鑑定士の存在、役割が大きくなってきます。 

 

ぜひ、不動産鑑定士に相談して下さい。

 

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栄光神奈川鑑定  不動産鑑定士 不動産カウンセラー  田邉 勝也
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