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生産緑地指定解除の2020年問題 解明します

生産緑地指定解除の2020年問題 解明します

2018/01/22

地主さん、生産緑地2022年問題ってご存知ですか。

 

2022年時点で30年経過しての指定解除するのか、農業を継続していくのかの選択に迫られます。

 

時代が変わり、1992年の「生産緑地制度」が制定された当時とは農家事業も異なってきている中で選択をしなければなりません。

 

指定解除され宅地化可能の農地が大量に放出されることで空き家問題が湧き上がっているのは事実です。

 

そんな中で農家の方々は正しい知識と認識をもって頂きたいと思い不動産鑑定士の立場で整理してみました。

 

 

1、「生産緑地制度」指定解除と今後の対応策について

 

(1)経緯

 

1974年 生産緑地法の公布

 

市街化区域内で大都市圏の一部の農地は宅地並み課税され、農業収益では維持できないので、ほとんどの農地は宅地化された。

 

1992年に同法が改正され「生産緑地制度」が制定された。

 

一部の土地の固定資産税は農地並み課税に軽減された。この制度下での多くの農家は固定資産税は安くなるが、30年間の長い期間、営農しなければならなく、宅地化が出来ない制約下に置かれた。現実問題としては農業収益は低く、農業従事していく方も高齢化し、継承者も既にサラリーマンとして働いているので農業を継承する意思がない状況でもある。

 

燐接地で宅地化された農地には賃貸アパート、マンションが建ち、一定の収益をあげ生活の基盤になっているのをみているので、2020年には生産緑地指定を解除してアパート、マンション等を建築したいと考えている方もいるが、現在でも供給過多で空き家問題が発生している中で宅地供給(アパート、マンション供給)をすることでどうなるかが2022年問題となっている。

 

 

2015年 「都市農業振興基本法」が成立された

 

2016年 「基本計画」が閣議決定された

 

都市農地についての基本方針は従来は「宅地化すべきもの」であったがこの「基本計画」では緑地保全や防災を重視し、「都市にあるべきもの」に方向転換された。

よってこの方向転換で、国(農林水産省、国土交通省)も都市農地として保全していこうとの方向にあることが確認できる。

 

2017年4月28日 「生産緑地法」が改正された。(都市緑地法等の一部を改正する法律案が成立)

 

① 面積要件の緩和

改正前は500㎡であったが、各自治体が必要と認める場合は条例にて300㎡を下限として面積要件を定めることができる

 

② 生産緑地内の施設制限の緩和

改正前は生産・出荷・加工・保管・処理の為の施設に限定されていた

改正後は上記に地産品を用いた加工・販売もできるようになった。

 

③ 特定生産緑地制度の導入

 

・ 生産緑地指定から30年経過が近づいた農地について、各自治体が農地として保全することが良好な都市環境の為に有効であるとした場合、農家と事前に特定生産緑地への指定の同意を得て、各自治体は当該地を特定生産緑地に指定し、買取りの申し出をすることが出来る期間を10年間先送りにするという制度を導入した

 

・指定から30年間が経過した生産緑地は10年毎に更新できる

 

このことは2022年の30年経過後の買い取りの申し出を減少させ、農業保護機を強化することを意図としている。従来のように30年という長い期間ではなく、10年という期間であれば2022年に他の所有者と一緒に指定解除することなく、先ずは10年間は特定生産緑地の指定を受けよう考える方がおり、10年ごとに検討できるメリットがある。

 

④ 田園住居地域の創設

都市計画法での指定地域の改正・・生産物を使ったレストラン、直売所の建築が可能で,低層住宅と共存できる地域になりえる。

 

 

(2)生産緑地制度の特徴

 

① 市街化区域内の農地を営農することを条件に固定資産税や相続税の優遇を受けることが出来る制度

 

② 500㎡以上の面積であったが、各自治体が必要と認める場合は条例にて300㎡を下限として面積要件を定めることが出来るように改正された。

 

③ 市区町村により都市計画法によって地区指定がされる

 

④ 建築行為、宅地造成等の制限がある

 

⑤ 指定の解除は告知されてから30年経過が必要であったが改正で特定生産緑地制度が導入され、農家の同意を得て特定生産緑地に指定されると10年ごとに買い取りの申し込みが出来、更新が可能になった

 

 

(メリット)

 

① 固定資産税の軽減 ② 相続税納税猶予制度

 

(デメリット)

 

① 現行では30年間(改正では10年ごと)の経過または相続時のみ解除可能

 

② 営農を止めた場合は納税猶予が打ち消され、遡っての課税が発生する。更にこの時の課税には利子課税が加わり、一括納税が課せられる。

 

③ 相続時の土地価格は5%軽減されるだけで宅地価格はほとんど変わらない

 

 

(3)生産緑地保有者(地主)のこれからの課題

 

① 市街地の住宅地化の進展による変化の中で2022年に営農するかどうかを下記の状況から判断することが難しい

 

a 農業従事者が高齢化し営農は難しい

 

b 後継者の不在(後継者がいてもサラリーマンで営農が不可能)

 

c 2022年は東京オリンピック開催後2年目に当たり、バブルが崩壊して先いきが不安定な状況下にある

 

② 判断基準

特定生産緑地指定し、とりあえず10年間営農していくと判断するか、指定解除して市町村に買い取ってもらう方向に進むが財政危機の市町村は買いきれない。

その結果、宅地化、転用目的で売却するか、自己所有地を宅地転用してアパート、マンションを建築し、賃貸事業に切り替えることも選択するが、上記の①-cのとおり市場に供給しても供給過多で値崩れして自己破産することになってしまう可能性がある。特に立地条件(交通の便が劣る(徒歩圏外)が劣る土地には賃貸住宅の有効活用はしない方がよい。

 

 

(4)相続税の納付課題

 

① 相続税評価額は宅地の95%で生産緑地制度のメリットは少ない

 

② 売却してその売却額で納付するには期間が短い

 

③ 売却活動期間が短いと安売りすることになり採算的に不利益である。

 

④ 相続税納税猶予制度を利用するには終身営農が前提であり、途中で営農をやめると遡っての課税が発生する

 

 

(5)生産緑地対策

 

① 区画整理をする(生産緑地による)

 

② 一人でも可能(7人以上は組合施行)

 

③ 保留地を提供して一部を売却する

 

④ 将来宅地化する農地はいつでも集中的に建物が建築できる

 

⑤ 自然と住宅地が享受して美しい街並みにして住みやすい住宅地にする

 

 

(6)地主の今後の取るべき方向性

 

生産緑地を継続するか、一部指定解除して売却するか、賃貸アパート、マンション等に有効活用するかの判断をしなければならない。

 

一部売却し、一部特定生産農地に指定し、地域環境を保全、防災の観点から農地として保存しておく。国は所有者自身が農業に従事しなくても第三者に貸し出し、例えば市民農園や福祉施設地として利用することの改正を検討されているので総合的に検討すべきである。

 

基本的には全てが指定解除され宅地化することはないが、全体地の一部を指定解除して宅地化することで立地条件の良い土地での有効活用での収益確保は良いが、一部は特定生産緑地として指定し、自然と共存した街づくりの推進していくことを考慮することも良い。

 

2022年の「生産緑地」期限切れの際、地主は利用を10年延長するか市町村に農地の買い取りを求めるかの選択ををする。だが、営農をあきらめる人が増えれば、一気に宅地化が進む可能性がある。そうなれば、今でも供給過多で空室が増えているのに空室は倍化して住宅地価格は急落するのではないか等の「2022年問題」として懸念する声がある。そこで農林水産省と国土交通省は従来の「宅地化推進」から「都市部の農地生産緑地」を維持する方向に切り替わっており、動き出している。

 

・「生産緑地の賃借」

地主自ら耕作しなくても、企業やNPOに農地を定期賃貸する。

市民農園。借り手のニーズは強く、都会の飲食店に新鮮な野菜を届けるといったサービスの広がりも期待できる。

 

 

・2016年「都市農業振興基本計画」が閣議決定され、その中で、都市農業について、農産物の生産供給だけでなく販売、加工しての食事(レストラン)更には農作業体験の場や災害時の避難所としても使え良好な景観を生む機能があると評価した。

都市部の農地は全農地面積の2%しかないが、消費地に近く、販売額ベースでは全国の約1割を占める程、都市農地の役割は大きい。

 

 

 

 

 

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栄光神奈川鑑定 不動産鑑定士 不動産カウンセラー  田邉 勝也
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