相続土地評価、相続税路線価方式の限界、その対応策を不動産鑑定士がします。
2017/05/16
相続税路線価方式は相続税申告での相続土地を評価する方式であるが、絶対的な方式ではなく,真の時価を求めることが難しい場合がある。
相続税申告は自己申告制をとっているので,相続土地も自己評価して相続税を算出していたのですが、相続土地は個別性があり個々の土地価格が異なってしまい、国税当局も内部審査する為に時価を算出する一つの基準として「財産評価基本通達」を定め、土地は原則として相続税路線価方式にて時価を評価すると通達を出したのです。
この通達はあくまで内部通達ですから納税者は従う必要はないのですが、担当税理士はこの相続税路線価方式を採用して評価していれば国税当局のとおりが良いので絶対的な方式として適用しているのが現状です。
1、相続税路線価方式の限界
相続税路線価はその地域を同じ価格形成要因が具有する同況類似地域で区分し、その地域内に標準地を設定し(その地域に地価公示地がある場合はその地価公示が標準地になる)その標準地の価格を取引事例比較法を適用して評価します。
この標準地の価格形成要因(駅からの接近性、接道街路条件(幅員、系統)、環境状況、自然的状況、用途規制 規模、標準的使用)が最も標準的な標準地になる。
この段階までは問題はないが、実際には相続土地は個々に状況が異なりその土地の個別的減価要因を含めて適正な評価が出来なければ真の時価を求めることは出来ません。
例えば、地域は戸建て住宅が多い住宅地域でその地域内に1000㎡の傾斜地部分が多い不整形な土地はどう評価するでしょうか。
規模が1000㎡で大きいから広大地減価の適用が出来るかの判定をしなければならない。
更に傾斜地なので、開発に当たっては造成費用、開発負担を要しますがこの方式の中ではあまり考慮されていません。同じ道路沿いに100㎡の土地と300㎡の土地が横並びに並んでいて相続税路線価では同じ価格で表示されていますが、実際には両土地価格は同じではなく土地価格は異なるのです。このことは税理士では市場分析が出来ていないので適正な判断は出来ません。
相続底地・借地権の評価
地域は幹線道路沿いの中高層のマンション、一般住宅、及び沿道型店舗が建ち並ぶ地域である。
本評価対象地は低層の木造建物の所有を目的とする借地権の評価である。
地域は中高層の建物が建つ地域なので標準価格は中高層店舗付き共同住宅の路線価が付されている。
評価対象地の利用は契約上から低層住宅に制約されている。
ですから地域の標準的使用である中高層店舗付き共同住宅の利用は本賃貸借契約からは出来ない。
よって、借地権価格の基となる土地価格は中高層店舗付き共同住宅ではなく低層店舗付き住宅になります。
これを不動産鑑定評価では「契約減価」といいます。
実際に中高層店舗付き共同住宅として借地を利用するには地主に条件変更承たく料を支払わないと建て替えは出来ない。
よって、不動産鑑定評価では更地価格から一定の金額(条件変更承たく変更料相当分)を控除して借地権価格の基礎価格とします。
この取り扱いについては相続税路線価方式では考慮されていません。
ですから土地価格 借地権割合は相続税路線価の数値をそのまま採用することは大間違いであります。
2、減価要因の減価率が大きい土地、相続税財産基本通達で定められない減価要因を持つ土地は相続税路線価方式では真の時価を求められず、不動産鑑定評価を併用した方が真の時価を求め易い場合がある。
例えば、建築基準法の道路に約1mしか接道してない土地、無道路地、崖地を含む土地等の評価対象地としての減価率が大きいが相続税路線価での評価は簡便的で、個別的増減価率の程度は実際より小さく画一的で土地によっては、実勢時価を反映し切れない場合がある。
3、対策
相続はその相続対象地の時価評価が根源であります。
でも相続税法での税務評価方式は簡便なので標準的な土地については元々時価の80%の価格評価されているので問題はないが、上記のような個別的減価要因の減価率の大きい土地は税務評価方式では適正な時価を反映し切れないので、不動産鑑定評価とセットで対応するのが最善です。
流れとしては
① 相続税路線価方式で土地価格を評価する。
② 不動産価格調査(簡易鑑定)により実勢時価を評価する。
③ 相続税申告の場合で実勢価格が相続税路線価を下回る場合は正規の不動産鑑定評価をして申告での相続土地の価格を不動産鑑定評価額に置き換え申告することも可能です。
必ず不動産鑑定士に相談され、アドバイスを受けて下さい。
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相続、借地権・底地の時価評価を得意とする不動産鑑定士
栄光神奈川鑑定 田邉勝也
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