東京都、横浜市、川崎市に精通した借地権・底地専門の不動産鑑定士の田邉勝也です
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栄光神奈川鑑定 不動産鑑定士 田邉勝也
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借地権の時価をどう把握するか
旧借地権が存在している限り世代が変わり、お互いが借地に関する実務的な知識が不足していることで諸々のトラブルが生じています。
その中で一番は借地権の時価です。
そこでここでは下記の前提条件を設定して借地権の売買するに当たっての基本的事項について勉強していきましょう。
1 前提条件
川崎市の住宅街の土地を昭和40年に木造住宅を建て利用するために借地し、適正な地代を支い、2回の更新時に更新料を支払い現在に至っている。
建物も老朽化してきたし、借地権を売却して住み替えしようと考えたが、誰に相談していいかわからなかったが、ホームページを見たら信頼がおける不動産鑑定士がいましたので相談した。
2 目的
借地権を売却するに当たっての借地権付き建物の時価をは把握したい。
3 不動産鑑定士との面談での確認事項
・評価対象不動産の物的確定
土地の所在位置、形状等建物の所在、構造、用途
・賃貸借契約の確定、確認
4、借地権とは
他人の土地を建物を建て利用することを目的に土地賃貸借契約を締結し、権利金及び固定資税以上の地代を支払うことによる借地人に帰属する権利を借地権と定義されている。
建物建築・利用でない青空駐車、資材置き場の一時使用、地代を払わないでの無償使用貸借は借地法での借地権ではない。
5、借地権価格について
(1)借地権価格の発生原因
① 長期契約期間になると本来の経済賃料(地代)と現行支払い賃料との(差額賃料分を借り得分とする)差額分を資本還元して借地権価額を求める
設例
4500万円(90万円/坪×50坪)の住宅地を借地差額賃料 の発生
・新規に賃貸した場合の経済賃料
(4500万円×1.5%÷12月)≒ 月額56000円
・現行支払い賃料
{(4500万円×0.2%)×4倍}÷12月=月額30000円
標準的な継続地代の利回りは0.8%程度また固定資産税額は時価の0.2%程度
市場取引においては、上記のとおり賃料が半分以下なので借地権を更地の半値で買っても経済的に見合うので、市場で取引がされることにより借地権価格が成立する。
この成立には借地権取引慣行が成熟していること
② 地価上昇に対する借地人の貢献分は、元々借地人に帰属するものであり、借地権をを賃貸借当事者間で売買する時はそれを清算しなければならない。それが借地権価格であるとする考え方
(2)借地権価格の求め方
不動産鑑定評価基準では次の4評価手法を掲げている。
① 取引事例比較法
土地の取引事例比較法同様に借地権取引事例価格から評価対象地の借地権価格を求める
② 借地権残余法
更地の収益還元法同様に借地権付き建物の純収益から建物に帰属する純収益を控除して得た借地に帰属する純収益を資本還元して求める手法である。
③ 賃料差額還元法
借地権の経済価値と実際支払い賃料との差額分を借り得賃料を資本還元して価格を求める手法
④ 割合法
更地価格に相続税路線価での借地権割合 地域の慣行借地権割合等から求めた借地権割合を乗じて評価対象地の割求める手法
上記4手法はそれぞれの立場での手法としての妥当性はある。
実際に借地権付き建物の売買での借地権価格はどちらかと言えば、④の割合法が多いのですが、ここで注意しなければいけないのはこの割合法で求められた借地権価格は相続税申告の際での評価価格で単純に更地価格(所有権価格)を借地権価格と底地価格に按分した価格で、個々の土地賃貸借契約の個別性を反映してなく、不動産鑑定評価では参考にはするが上限価格として捉えている。
他の①の手法で求められた価格は市場性を反映した価格でいいのだが、実際には契約内容の確認ができないので採用は難しい。
②及び③の手法で試算された価格は個別性を反映し、理論的な価格で不動産鑑定士は適用している。
不動産鑑定評価では上記手法を選択して試算する。
借地権の売買を前提にした場合、上記の手法で求められた借地権価格は第三者に売買する価格で、不動産鑑定評価基準では価格の種類としては「正常価格」として捉えている。
不動産売買は上記の第三者間での取引の外に賃貸借契約当事者(地主、借地人)間での取引価格が多い。
例えば借地人が借地権を地主に売却する場合の借地権価格は地主は借地権を取得することで完全所有権に復帰する増分が発生するので、その増分価値の一部が上記①~④の手法で試算した借地権の正常価格に加算されるので高い価格になる。
注意すべき点
借地権価格の基となる基礎価格は契約目的によって異なる
相続税路線価での借地権割合は商業地、住宅地等の用途的地域別には表示されているが、契約内容の個別性が反映していない。
例えば、賃貸借契約の目的が非堅固(木造建物)建物を建て店舗付き住宅としての契約になっている。結論的には、この借地権の基礎価格は低層の木造店舗付き住宅地価格である。
しかし地域は中層の店舗付き共同住宅が多い。
地域の標準的使用は中層の店舗付き共同住宅地あるが、当該地は土地賃貸借契約で土地の高度利用は制限され低層建物利用になってしまう。
よって、借地人は中層の店舗付き共同住宅に建て替える場合は、地主に借地条件変更に伴う変更料を支払わなければならない。その分だけ借地権価格の基となる基礎価格は低くなる。
ですから、単純に相続税路線価に相続税路線価での借地権割合を乗じて借地権価格を求めては過大評価になってしまいます。
結論的には、中層の店舗付き共同住宅地としての更地価格に契約減価(土地価格の🔺10%)をした土地価格に非堅固建物所有を目的とした借地権割合(60%)を乗じ、その借地契約の種類、目的等を十分考慮して求めることとが重要である。この辺は不動産鑑定士でないと的確な評価は出来ない。
(税務評価)
(相続税路線価×借地権割合)×借地数量=借地権価額
(不動産鑑定評価での借地権価格評価手法の割合法)
{(更地価格(時価)×契約減価)×契約目的の借地権割合}
×借地数量=借地権価額
必ず、借地権に精通した不動産鑑定士のアドバイスを受けて下さい。
借地権価格の基礎価格
更地価格(中層店舗付き共同住宅地価格)ー契約減価(建て替えに伴う一時金、更地価格の10%程度)=当該地の基礎価格(低層店舗付き共同住宅地価格)
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栄光神奈川鑑定 不動産鑑定士 不動産カウンセラー 田邉勝也
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